平井圧迫療法賞について

1.趣 旨

圧迫療法の歴史は古く、医聖ヒポクラテスの時代にさかのぼる。今日においては、下肢静脈瘤や深部静脈血栓後遺症などの静脈疾患の治療、リンパ浮腫の治療および周術期等における静脈血栓症の予防が圧迫療法の主な役割である。臨床の現場では手術や薬物療法が併用されることも少なくないが、圧迫療法は基礎的かつ中心的な治療方法であることは論を俟たない。

圧迫療法には弾性ストッキング、弾性包帯、マッサージ器を使用する間欠的空気圧迫法などがあるが、もっともよく使用されるのは弾性ストッキングである。日本静脈学会では、平成14年に弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター養成委員会が組織され、全国で講習会を開催し正しい圧迫療法の普及に努めてきた。一方、静脈・リンパ還流の病態生理や圧迫療法に関する研究については、日本静脈学会総会における演題や雑誌「静脈学」にすぐれた論文が報告されてはいるが、欧米に比べるとまだまだ少ないのが現状である。こうした現状を鑑み、本邦における圧迫療法の学問的発展に寄与することを目的として、日本静脈学会総会での優れた演題を顕彰することにした。

平井正文先生は平成17年7月に第25回日本静脈学会総会(名古屋)を開催され静脈学の発展に寄与された。また本邦における圧迫療法の第一人者であり、優れた研究を多数報告してきた。さらに、前述の弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター養成委員会を設立し、平成25年1月に急逝されるまでその運営に尽力された。その長年にわたる多大な貢献を讃えて、圧迫療法に対する奨励賞を「平井圧迫療法賞」と称する。

2.選考方法と表彰

日本静脈学会総会において発表される圧迫療法に関する演題を対象とする。弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター養成委員の採点により最も優れた演題を決定し、表彰式は総会期間中に行う。日本静脈学会理事長と日本静脈学会総会会長による表彰状および弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター養成委員会から贈呈する副賞を授与する。

3.受賞者一覧

・第一回 戸島雅宏先生(平成25年6月倉敷市)
「「圧迫圧」と「伸び硬度」による圧迫着衣の分類」
戸島雅宏、波房諭補、森野良久
かみいち総合病院 血管外科

・第二回 松田奈菜絵先生(平成26年4月沖縄県名護市)
「リンパ浮腫治療用ストッキング・治療用包帯のリンパ浮腫患者着用時の着圧測定とその動静脈機能に対する影響」
松田奈菜絵1、戸崎綾子1、孟真2、松原忍3、斉藤雪枝4、橋本紘吉1
1東神奈川とさき治療院
2国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院
3横浜市立大学形成外科学教室
4国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院 生理機能検査

・第三回 杉澤良太先生(平成27年7月・奈良市)
「下肢の自律的リンパ管収縮力低下者に対する弾性ストッキングの継続的着用の効果についての検討」
杉澤良太、海野直樹、山本尚人、犬塚和徳、田中宏樹、佐野真規、斎藤貴明、片橋一人
浜松医科大学医学部 外科学第二講座

・第四回 末廣晃太郎先生(平成28年6月・弘前市)
「高齢者慢性静脈不全に対する圧迫療法のアドヒアランスと効果」
末廣晃太郎、竹内由利子、田中裕也、佐村誠、上田晃志郎、原田剛佑、山下修、森景則保、濱野公一
山口大学医学部器官病態外科学 血管外科

・第五回 今井祟裕先生(平成29年6月・徳島市)
「圧迫療法の普及と地場産業の復興を目的としたNARAソックス・プロジェクト」
今井祟裕1、齊藤精久2、竹中美鈴3、和田小百合3、黒瀬満梨奈3、長村果奈3、今谷敏司4、山下哲児5、西岡志真6
1西の京病院血管外科
2同内科
3同看護部
4同検査科
5同放射線科
6同薬剤部

・第六回 菊池絵里先生(平成30年6月・横須賀市)
「静脈血栓塞栓症予防用具による医療関連機器圧迫創に関する10年間の取り組み」
菊池絵里1 、孟真2 
1国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院看護部
2同心臓血管外科

・第七回  原尚子先生(令和元年7月・名古屋市)
「多職種連携による、退院後にリバウンドしない入院保存療法」
原尚子、三原誠
JR東京統合病院リンパ外科・再建外科

・第八回  牛山浅美先生(令和2年9月・秋田市・WEB開催)
「抗がん剤による末梢神経障害に対する圧迫療法の効果の検討」
牛山浅美¹、小島淳夫²
¹東名厚木病院看護部
²同血管外科

・第九回  末廣晃太郎先生(令和3年9月・花巻市・WEB開催)
「 チューブ包帯は弾性ストッキングの代用になりうるか 」
末廣晃太郎、溝口高弘、永瀬 隆、竹内由利子、佐村 誠、原田剛佑、森景則保、濱野公一
山口大学医学部器官病態外科学

・第十回  白石恭史先生(令和4年7月・東京都)
「 非伸張性布を用いた新しい下腿圧迫ガーメントの開発 」
白石恭史
白石心臓血管クリニック